カテゴリー別アーカイブ: 第二章 日本の技術は世界一

第1話) 海外で髪を切った事ありますか?

海外で生活した人であれば、一度は経験するかもしれない海外の美容師さん(ここではヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアなど西洋の美容師さんを‘海外の美容師’と称します)のテクニック。誰もが声をそろえて「海外の美容師さんは日本人の髪を理解していない」と言う。

「絶対に写真どおりにはならない」
「パッツンと前髪を切られた」
「これ以上は梳けないと言われて全然梳いてくれない」
「パーマをかけたら大昔のクルクルパーマになってしまった」
「カラーをしたら地肌がヒリヒリと耐えられない痛さだった」
などなど、上げればきりがない・・・。

本当に海外の美容師は下手なのだろうか、日本人だったら全員が上手なのだろうか、アメリカも含め海外で8年働いて見て聞いて感じた事、その中で実際に約4年間オージーと一緒に働いた経験、そしてオーストラリアの専門学校の美容師科で学んだ1年を、日本の専門学校とサロンとを比べながら語っていきたい。

Hairdressing コース
<オーストラリアの美容師科、授業風景>

まず、日本人の髪質と西洋人の髪質が全く別物である。本当に全然違うのだ。1本の毛の直径が、西洋人が0.03ミリに対して、日本人の毛は0.09ミリと三倍も太い、コレは実際に僕がオーストラリアの専門学校で、クラスメイトの白人の女の子の髪が0.03mmで僕の髪は0.09mmだったので間違いない。僕の髪は日本人の中では太い方ではないので、もっと太い人はたくさんいるはず。と言う事は、4倍も5倍も日本人の髪の方が太いのである。

西洋人の、この細くて柔らかい毛なので、どんなに短く切っても寝てくれる。日本人の髪だったらツンツンに立つような髪も、きれいに寝てくれるのだ。カットが下手でも収まってくれるし、ブローが下手でも寝てくれる。しかし日本人の髪では、計算して切らないとブローもできなくなってしまうし、ダンダンの虎刈りカットになってしまうのだ。

クラスメイト全員
<一年間、共に授業を受けたクラスメイト>

この柔らかくて自由自在に動きそうな西洋人の髪だが、薬液の浸透や熱の伝導などはアジア人より効き目が悪い。最初は髪にコシがないから?なんて思ったのだが、そんなレベルじゃなく形がつかない、カラーも色が入らないし、パーマも油断すると全然かからない。硬くて手ごわそうな日本人の髪の方が短時間で形がつき、見た目が柔らかくて壊れそうな毛の西洋人の髪は全然形がつかない。

これは、キューティクルの厚みが違うのと、輪切りにしたときの断面の形が違うからである。まず西洋人のキューティクルの割合が、「毛の40%がキューティクル」に対し、アジア人の毛は「10%程度しかキューティクルに囲まれてない」。

アジア人の直毛の髪を輪切りにしたら金太郎飴のように「きれいに丸を描いている」。その反面、西洋人の髪は殆どがクセ毛でウェーブがついている、と言う事は「輪切りにした時に楕円形」なのである。髪を真っ直ぐにしたりウェーブにしたりと、形を司る結合体は毛の中心部にあるので、西洋人の髪はなかなか中心まで届かないのだ。

この髪の太さと硬さ、キューティクルの多さと輪切りの断面、それプラス文化と美的感覚の違いによって上手が下手かを判断されるので、どこで美容師としての教育を受けたかでその技術者の評価が変わる。

日本人には日本人の髪質と骨格、そして日本の美的センスに合わせた理論を習い技術を取得する。西洋は西洋人に合ったカット技法と理論が確立されている。

そういえば、金髪で可愛らしいオーストラリア人の女の子が日本に滞在し、日本の美容室へ行って酷い目に合ったと話を聞いた。

「どうして日本の美容師はあんなに下手なの?」
「2cmだけ切って欲しいとお願いしたのに、切った後に信じられないくらい梳いたの」

とカットが終わってから一週間は外に出れなくて泣いていた…という女の子にも出くわした事があった。

この第二章では、カット、パーマ、カラー、縮毛矯正、シャンプーなども含めて、何がいったい海外と日本では違うのかを、分かりやすく理論的に説明していこう。

第2話)日本とオーストラリアの教育の違い。

専門学校レベルでのオーストラリアの教育は、日本より優れている所あるように思えた。豪州では州立と私立とに分かれ美容師科があり、Certificate(資格)を取るためには現場で4年の見習い期間を、週に4日働きながら、そして週に一日だけスクーリングに通う方法。そしてフルタイムで1年間のコースに通って、卒業するとCertificateがもらえて、見習い3年生として就職する。よって学校を卒業してから2年は見習い期間を得て、Qualified Hairdresserを取得する。もしくは学校を卒業と同時にTRAという審査機関の試験を受けて飛び級のように一発試験でQualificationを取得してもよい。

 

僕が通っていた州立のHairdressingコースは、全員オージーの生徒と先生の中、僕だけが留学生でアジア人だった。やはり英語での授業は厳しいものがあるし、ちょっとしたコミュニケーションのミスでとんでもない事故に繋がる可能性もあるので、日々緊張感を保って授業を受けていた。日本で経験が10年以上あっても、英語環境になるとこれほどまで大変なのかと感じたので、もし経験のない留学生は、英語の授業をどこまで理解をしているのか、そうとう大変だろう。

 

一 年コースのうち、前半の半年間は理論を習う。モデルウィッグを中心に、カット、カラー、シャンプー、セット、ブロー、パーマなどを習う。アサイメント(レ ポート提出)も頭皮の皮膚疾患についてリサーチをしてレポートをまとめたり、カラー剤の種類と用途についてエッセイを書いたりした。これは日本語でなら全 て理解していることなので難しいことではなかった。

 

ただ、習練するという感じではなく同じことは二度とやらない。先生が一度デモストレーションを行い、それを生徒が真似をして実際にモデルウィッグで行い、先生が注意をしながら要所要所を教えて終わりという感じだった。シャンプーも先生が一度見せてくれるが、あとは生徒同士がお互いにモデルになってやり合いをして終わり。なので数時間しかシャンプーもしない。全てがそんな感じなので、家に帰ってから復習をかねて自分で練習をしていないと、あとが大変だと思うが、誰もやっていないだろう(笑)。

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州立のHairdressingコースは、週に三日の授業だったので、どこかのサロンで見習いとして働きながらも通える。逆に残りの4日を遊んでいると後半の半年間が苦労するでしょう。

 

僕 が受けた日本の教育は、皮膚科学、解剖学、香粧品科学、伝染病学、公衆衛生学、そして物理と化学があり、もちろん椅子に座って授業を受けていた。しかし こっちは、そのような椅子に座って行う授業というのは、カットやカラーの実技に入る前に行う理論を少しやるだけ。90%が実技中心のカリキュラムであった。


後半の半年は実践。学校内にサロンがあり、そこでお客さんが実際に予約をいれて、カウンセリングをして、お金を頂くという、大学付属病院のような?形態である。生徒は、かかっ てきた電話を受け取り予約を入れ、予約の前日にはコンファーム(確認)の電話を入れてお客様に忘れられないように来てもらう。予約の時間に来たお客さんを案内し、オーダーを取り、そのオーダーの内容を先生に口頭で伝え、「だから自分は何をこれからするのか」を図入りで説明をして「GO」をもらってスタートする。

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それが、終了すると、先生が全てチェックをして合否を決められる。毎日が試験なのである。ワンレンを3つパスするとワンレンの単位を取得、それをレイヤー、 グラデーション、カラーも永久染毛材、半永久、パーマはロング、ショート、そしてセット、から縮毛矯正、メンズカット、シェービング、ひげのカットまで、 ほぼ3回ずつパスしないと単位が取れなく卒業できない。現に同級生の半数は卒業できなくて留年してしまった。

 

前半のウィッグで練習している時から、反復練習を自分でおこなっていないと、この後半の実地訓練の時に怖くてお客さんに触れない。しかしメンズのお客さんなんて、生徒数×3人も来ないし、取れる単位はできるだけ早く取っておかなければ卒業できない。

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オーストラリアの学校教育の良いところは、実践を体験できて、いち早く現場になれることができる。しかし悪い所が、卒業したら「私は一人前のHairdresser」と向上心をわすれてしまうところである。

 

日本の教育の悪い所は現場を体験する機会が非常にすくなく卒業してサロンに就職するところか もしれない。生身の人間、しかも全くの他人の髪に触れると言う経験をしないで現場に立つと、ものすごい緊張感とストレスだろう。しかし、その反面、理論的 には深い所を知っているし、先生も「学校出たくらいでは使い物にならない」と言ってくれるので、サロンに立ってからがスタートラインと気づいている。

 しかし、全ての勝負が現場である。その現場のモチベーションの違いが日本のレベルの高さを物語っているようだ。

第3話)日本とオーストラリアの現場教育の違い。

自分が日本で見習いをやっていた時は、寮生活をしていたので、限りなく練習する環境にあった。朝99時まで営業だったので、8時半までにはサロンに入れるように出勤をし、冬場は駐車場の雪かきがあるので7時半にはサロンに入り準備をする。9時にはお客さんが入ってくるので、休む暇などなく夜まで仕事、ランチタイムなどは5分あればラッキー。夜855分にパーマなんていうのもあり、そうなると夜の11時過ぎまでお客さんがサロン内にいる。原則、サロンの中にお客さんがいる時は、掃除や洗濯機は回せない。ひたすらお客さんが終わって帰られるのを待ち、やっと掃除と洗濯を開始できる。それから練習を行い、終わったら、もちろん深夜の1時や2時だった。

 

休日の前の日は、朝まで練習ができるので、朝刊が来るまで練習をし、朝ごはんを食べてから寮に帰って寝る。そして夕方にサロンに戻り練習してから翌日のサロンの用意をして一週間の始まりを待つ。

 

一週間の練習時間は20時間を越えていた。休み無しの365日の練習だった。


 

オージーのサロンを見てみると。。。営業時間が朝9時からだとスタッフは朝9時丁度にサロンに入る。見習いの子でも、10分前に来れば良いほうだ。朝一番のお客さんがサロンのドアの前で待っている事も珍しくない。夕方5時には閉店なのだが、閉店と言う意味は5時に鍵を閉めて帰るという意味だから驚く。

 

練 習会などは、週一で行なっているサロンはあるけれど街でもトップサロンだ。誰もが簡単には働けないしオーディションを受けてからじゃないと雇ってもらえな い。そんな高級サロンでも練習会となれば1週間に2時間程度のものだろう。美容師見習いでも「仕事」と割り切っているのでサロンは技術を学ぶ場所ではな い、給料をもらう場所なのである。中にはモチベーションが高くて、練習するスタッフもいるが営業時間中だ。

 

本気でカラーを覚えたい子は、ウエラやシュワルツコフなどがメーカーで教室を開いているクラスにお金を払って参加して学ぶ。カットを覚えたいスタッフは、お金を払ってトニー&ガイや、メーカー主催のカット教室に参加をして技術を学ぶ。サロン内では教えてくれないからだ。

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<メーカー主催の講習会>

日本は低く見積もっても一ヶ月に60時間の練習時間。

オーストラリアは、高く見積もっても一ヶ月に12時間の練習。

 

日本のスタイリストは、5年で一人前と言われる(個人差はあるが)。5年でカット、カラー、パーマ、縮毛矯正やエクステなど、殆どの技術を取得できる。

 

もし、オーストラリアの練習のスピードで日本の5年経験のスタイリストに追いつくには、

最低でも25年はかかる計算になる

60時間/月 x 60ヶ月(5年)=3600時間

12時間/月 x 300ヶ月(25年)=3600時間

 

こっちでは、カットしかやらないカッター。カラー専門のカラーリストと分担制になっているケースが多いのだが、全部できるようになるなんて彼らの練習時間では無理なので、カットだけをひたすら取得し、またはカラーだけをとことん勉強して・・・と言うのが精一杯なのである。

 

僕 がオーストラリア人のサロンで働いていた時に、他のカラーリストやカッターの同僚に言われていた言葉が、「お前のように全部の仕事できる奴なんて、本当に 珍しいんだよ。そんな奴は見たこと無い」と、よく言われたが、日本では当たり前なので喜べない。逆に全部仕事ができるのに、肩書きが格好良いからなのか、 カラーリストを置いているサロンを日本国内で耳にするが、それがお客さんにとって何のメリットなのが、個人的には疑問である。外国のカラーリストは、全部 仕事を覚えるのが無理だから仕方が無いという理由もあってのカラーリストなんだが、日本の良いものが間違ったイメージで崩れていくのは心配である。

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 <営業中に練習をする>

日 本の美容師さんは休日でも講習会、講演会、教室、コンクールなど、休日は全て返上して技術向上のために走り回っているが、こっちでは、そんなことする人は 1%もいるのだろうか?休日は自分のために使うものなので、仕事はあくまでも週に38時間だけ。日本の美容師事情を話ししたら誰もが「クレイジー」という (笑)

 

日 本人が海外の美容師学校へ行き、現地のサロンで働いて技術を取得しようとする人も多いが、日本人のカット理論は習わないし練習や勉強する環境が整っている のか疑問である。将来、日本人を相手に仕事をするのであれば(場所は海外でもどこでもいい)日本国内でしっかりとした技術を学んでおかないと、海外には日 本の技術を学べる場所がない。

 

中にはバイリンガルで、日本人をターゲットとしないでも白人相手に仕事をすると決めた人は、海外の数少ない有名店で働くのを目指し、日本の理論を学ばずに西洋の理論を取得して勝負するのもよいが、やはり英語力がカギとなるであろう。

 

理美容に限らず、どの分野でも日本のクオリティは世界一である。その世界一の技術を学べる日本でしっかりとできない人は、中途半端で海外に出ても、結局は中途半端になってしまう。

第4話)日本と西洋のカットの違い(前編)

前編


その昔の日本では、男性は丁髷(ちょんまげ)女性は日本髪を結っていた。それが江戸幕府が幕を閉じ、明治維新が起こってからは西洋の文化が文明開化という言葉と共に一気に入り込んできた。

 

髪型も同じである。「散切り頭を叩いてみれば文明開化の音がする」という言葉が残っているくらい、長い髪を国民が短髪にしたという、理美容の歴史でも大きな変化であった。


そして、第二次世界大戦後に、理容と美容がハッキリと二つに分けれ、それから20年も経たない1960年頃、今では誰もが名前を知っているヴィダルサスーンが、Wash and Wearというコンセプトで「洗った後にブローをしないで形になるスタイル」という、カットの正確さが非常に重要になるカット理論を世にリリースしました。


日本でも、このサスーン・カットという言葉は誰でも知っているし、美容師になるにはこの理論を必ず知らなくてはならないほど、現代のカットには必要不可欠な理論、原点の原点になっていると言っても過言ではありません。


60年代、70年代は、この西洋から輸入されたカット理論をこぞって勉強し、髪質に関係なく西洋のものをそのまま日本人は真似をして髪型を楽しんでいた。この時代までは、日本と西洋のカットの違いなど無かったのではないかと思う。


今でも学校レベルで習うカットの基本は世界中同じである。ワンレンはワンレン、レイヤーはレイヤー、グラデーションはグラデーションなどなど…今も昔も変わらず同じである。お客さんに髪型を説明する時も、国籍問わず誰に説明をしても英語が通じれば全員が理解してくれる。


そ れでは、どうして海外の美容師さんは上手に日本人の髪を切れないのか?確かに日本国内で日本人でも上手に切れない人はいるだろうが、平均値を取ってみれば 間違いなく日本国内の美容室へ行けば、トンでも無い髪にはならない。しかし海外ではビックリするような髪型になるのだ。

 

この海外生活の8年の間に、緊急を要する「すごい髪にされたというお客さんに何度も出会った。

前髪を3cmくらいに切られ、しかも定規で測ったような真っ直ぐにパツンだ。オン・ザ・まゆ毛なんて可愛いものじゃない(汗; それらを修正するのだから、僕の技術力もアップする(笑)

 

パ ツンと切られる分には修正は可能だけど、困るのは切りすぎと梳きすぎ。中国人系、韓国人系の美容師さんにカットをしてもらい失敗したと言うお客さんは、こ の切りすぎと梳きすぎだ。目を瞑って何も考えずに梳きバサミをざくざく切り、梳き切ったようになり、カットラインを壊してしまい形にならないというのが多 い。

 

あ とは、ペラペラに梳き切った長い髪の上に、マッシュルーム・ボブが乗っかったような、変てこなタコのような髪型にされてしまった人。右側だけ異常に短く梳 き切ってしまい、これじゃマズイと思ったのか左側だけは普通に重たく長いままという、量も長さも左右バラバラの酷い髪型。

 

日 本人に切ってもらったというロングヘアーの素敵な女性は、頭のハチの部分を約2cmの幅でグルッと一回りくり抜かれて「髪が多いから量を減らしました」と の事。鉢巻が当たる部分の毛が無いなんて、そんなカット技法は聞いたことがない。その数ヵ月後になりポニーテールにしたら、熊さんの耳のように、くり抜い た毛が飛び出してくる。結局は日本で技術を取得しない中途半端なまま海外に来てしまった例だろう。


海 外にいる日本人美容師だからと言って安心はできない、日本語が話せる(日本人だから当たり前)というだけで、技術は西洋のものだったりする。日本での厳し い下積みを経験してないで、海外へポンと出て現地の専門学校を卒業しただけの美容師だと、やはり経験値も非常に少ないし練習時間も日本の何十分の一しかト レーニングをしていないし教わった技術は西洋人への理論。


あ とは、海外で10年以上も美容師をやっているという日本人美容師も、日本の流行のスタイルを10年間勉強していないから技術が古いと言う美容師もいる。 せっかく日本で技術を取得したのに、アップデートを怠けると、直ぐに古臭い美容師になってしまう。海外で生活しながら日本の情報を得るには、いつもアンテ ナを立て、定期的に日本へ帰ってこの目で見てくるという努力をし続けないといけない。


さて、話を元に戻そう。日本人と西洋人のカットが違う理由がいくつかある。


西洋人  

髪が細く柔らかい、量が少ない → 多く見せたい。

コシが無い、クセ毛が強い → 真っ直ぐの艶やかな髪に憧れ 

アジア人 

髪が太く硬い → 軽く(少なく)見せたい。

真っ直ぐでストレート → 柔らかい動きのある髪に憧れ

 

次回は、もう少し踏み込んで上記のことに触れていきたい。

後編へ続く。。。

第5話)日本と西洋のカットの違い(後編)

後編


この西洋から始まった現代のヘアースタイルは、西洋人の「多く見せたい、艶やかなハリのある髪に憧れる」というのが原点にある。それが日本国内でも60年代、70年代にはワンレングスといえば、本当に真っ直ぐ綺麗に切りそろえるのがワンレンだった。


しかし、その西洋人標準の好みのスタイルでは、日本人の「動きのある軽やかな髪」にはならない。そこで日本では、削(そ)ぐ、梳(す)く という技術が発達してきた。その削ぎの法則は80年代後半から進化を磨げ、今ではそれ無しでは日本のスタイルは作れないと断言できる。


同 じワンレングスでも、日本のワンレンは、世界標準のワンレンに切ったあとに、繊細に計算された削ぎ加減で、毛先が微妙に柔らかい動きを出す。この削ぐ計算 が削ぎの方程式と経験と勘なのである、この計算されたカットをしてもらったお客さんは、手入れがしやすく、長持ちもする。しかし、15分と言う短時間では カットはできない。ただ切り落とすだけのカットなら別だが、削ぎにはたくさんの計算が必要である。

 

僕がカットする前にチェックする項目があります。

1、毛の流れ
2、渦巻きの位置

3、頭の歪み具合

4、分け目
5、襟足
6、生え際
7、毛質
8、傷み具合
9、デザイン

これらを考慮して、その部位部位で
1、根元から何パーセント削ぐか
2、中間から何パーセント削ぐか
3、毛先は何パーセント削ぐか
4、スライドカットの必要な場所はどこなのか

を見極めてカットしていきます。

 

残念ながら、日本国内にいる美容師さんの全員が同じように考えているわけではなく、勉強しているほんの一握りの数少ない美容師さんだけは「どうやったらお客さんが毎日のスタイリングを楽にできるか、どうやったら長持ちするか」を考えています。

 

こんな繊細な「削ぎの技術」を考えなくてもよい西洋のカットですから、日本人のような硬くて太くて多い髪のお客さんが西洋人のサロンにいくと、思ったようにならないのです。

 

僕にも失敗の経験があるのですが、初めてブロンズのオージーのお姉さんの髪をカットした時のことである。西洋人は髪は細いけれど、本数はアジア人の1.2倍~1.5倍あるので、とても多く感じられます。

 

そこで、僕は多いから根元から梳けばいい・・・・と思って、根元から中間にかけて削ぎをいれました。もちろん分け目は深い所から削ぐと短い毛が立ってしまうので、毛先しか梳きませんが・・・・。

 

そ の結果、シャンプーをしたあとに現れたオージーの女の子は、猫がシャンプーしたあとのようなペタンとした情けない髪の量・・・。乾かしたらボリュームは出 るので、乾かそうとしたらブローができない。そう、根元と中間から削がれた髪の毛は、重さがないのでクセ毛に負けてクシュクシュとブラシの目に引っかかっ てこない。おまけに毛先が細々となっているので、しっかりした毛先に力がない。もう敗北でした。

 

ここでわかりました。西洋の教科書では、毛先3分の1までしか梳いてはいけないとある理由が。この失敗が僕をオーストラリアの専門学校へ導いてくれたのであった。

 

日本には、日本人の髪の性質と好み、それが歴史となって今の日本のカット理論ができあがっている事に気づいた。これを海外の美容室に行っても、やはり何かが違って当たり前である。

 

一つ気がついたのは、西洋で勉強した人が日本のカット理論を取得するのは半端じゃなく大変だろうけど、その逆、日本で修行をして海外に出れば直ぐに適応できると思う。

 

第6話)パーマの技術は皆無に等しい。

アメリカもヨーロッパ諸国も、もちろんオーストラリアもパーマの技術は発展していない。日本のような柔らかい「ゆるかわ」パーマなどは、西側諸国には無いと言ってもいい。ましてや男性がパーマをかけるなんて、普通はビックリされる(笑)

 

パーマのロッドは、細いロッドしかなく、ビッグロッド、ロングロッドや円すいロッドなどは日本特有のものである。オシャレな今風のサロンにはパーマのロッドすら無いなんてことも珍しくない。

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アメリカもオーストラリアも、このようなゴムとロッドが一体式。

実際に僕が働いていたオーストラリア人のサロンは、高級店でモデルクラブと提携していたのもあって、若いオシャレな女の子が多かった。しかしパーマをかけている姿は4年のうち一度も無い。

 

年 間で二人くらい、パーマをかけるお客さんがいた。どちらも白髪頭のおばあちゃんだった。パーマを巻くことができるのも40歳を超える美容師さんしか巻けな い。もう、こちらでパーマというイメージは、おばあちゃんがかけるもの、もしくはソバージュのようなクルクル、クリクリのパーマである。

 

オーストラリア人の彼氏を持つ日本人女性の話だと「今日はパーマをかけてくるの」と彼に言うと「それだけはやめてくれ!」となるらしい(笑)そりゃ日本のパーマのイメージとは程遠いからである。

 

それでは、どうしてパーマの技術が進歩しないか理由を説明しましょう!


まず西洋人の髪は、最初からウェーブ、カーリーなので、逆に真っ直ぐな髪に憧れている、よってパーマは必要ない。よく映画やドラマでみる外人さんのウェーブは天然、またはコテ(アイロン)で巻いている巻き髪なのである。

 

も う一つは髪質の違いである。西洋人の髪はキューティクルの側が厚く薬液が浸透しにくい、そして毛の断面図が楕円形なので、薬液が均一に中心部まで入ってい かないなどの理由がある。あとは髪の毛の形を司る毛の中心部の組織がアジア人と比べると十分には無い、なのでかなり強い薬液を使用し、細いロッドで巻かな いとキッチリパーマがかからないのである。

 

自 分も経験があるのだが「日本人のようなフワフワパーマをかけて欲しい!」というオージーの女の子に日本のロッドと日本のパーマ液を使用して施術をしたこと があったが、結果はかかりが弱い。数日後に再来店してもらい、もう一度かけなおしたが、それでも僕のイメージどおりの仕上がりにはならなかった。

 

そ れから毛髪科学のテキストから調べなおして、その失敗の理由がわかったのだが、と同時に西洋の国でパーマが流行らない理由もわかった。日本のような太い ロッドを使用して、刺激の弱いパーマ液を使用しても、細くて強い頑丈な西洋人の髪には十分な力は備わっていないのであった。

 

日本のパーマの技術は世界で一番。消費率もNo1でしょう。そうなれば自動的にメーカーも新製品の開発にお金をかけ、あらゆるメーカーから色々なアイデアで新しいパーマ液が発売され、新しい形のロッドなども出てくる。

 

間 違っても、海外でパーマをかけてはいけない。見た目はアジア人の方がパーマがかかりづらく見えてしまうので、最強のパーマ液を使用し、細いロッドを選択し (太いのが無い)、パーマのイメージがクリクリなものと思っている美容師さんにかけてもらえば、結果は想像できるであろう。

 

も う4年以上前だが、一時だけ一緒に働いていた日本人美容師さんは、「日本のパーマ液と同じですよ~」とお客さんに説明していたが、見たことも無いメーカー の英語で書かれていたパーマ液だった(笑) 内部告発でしたが、ある日本人経営の美容室さんも、仕入れが安いという理由で西洋人用のパーマ液を使用してい たとか。

 

たしかにパーマ液はパーマ液だが、内容成分も使用用途も全く違うので結果はやはり全然違ったものになる。きちんと勉強している「日本人美容師」さんにやってもらいたいものだ。

第7話) 年末年始の美容室

丁度、時期が重なったので、今年の最後のネタは年末年始の日本とオーストラリアの違いについてお話しましょう。

日本のサロンですと、年末は書き入れ時で大晦日まで営業しているサロンもまだあるかと思います。今だからこそ大晦日からお正月三が日はお休みのサロンも多いのですが、昔は違ったようです。

僕の父は理容師、母親は美容師ですが、両親の修行時代は、元旦の朝方まで仕事をし、初詣に行くお客様の髪を結ったりと、一年の中で一番忙しいのが年末年始 と聞かされていました。年を越す前に、銭湯へ行って一年の垢を落とし、新しい下着をおろし、髪もキレイに刈り込んで、お正月の三が日は髪型もきちんと保て るようにセットしてもらう。それが昭和30年代だったそうです。

僕が見習いだった頃は、クリスマスイブの夜は客足も途絶えて夜の7時くらいから掃除をする事ができました。31日も午後になればお客さんもポツポツと御来 店する程度でしたので、大掃除をしながら営業をしていました。そして給料と、ボーナスの5千円をもらって、先輩も後輩も実家に帰り3日の夜には、寮に戻っ てきて、4日からは通常営業という感じでした。

ところが、オーストラリアは違います!全然違います(笑)おそらくヨーロッパやアメリカなども同じなのでしょう。

12月24日のイブはお昼で終わり、簡単な掃除(いつもよりは丁寧)をしてから、スタッフとちょっとしたプレゼントを交換し、帰り際にはハグをして全員と 抱き合い、頬にキスをし合い、みんなは実家へ帰ります。クリスマスは家族で過ごすイベントなので、日本のような恋人と過ごすロマンティックなクリスマスと は違います。日本で言うお正月的な感覚なのでしょう。街は静まり返ります。

美容室に限らず、おおくの会社勤めの人も、この12月25日から4週間の有給休暇を取る人が多いです。ちょっと控えめに2週間の有給休暇を消費する人も最 近は多いみたいですが、12月25日から1月10日くらいまでは、殆どの人が休みにはいります。大手のチェーン店や、金融機関や技術系のエンジニアくらい でしょうか、1月2日から仕事に戻るのは。。。

サロンのオーナーも、スタッフがこの時期に有給休暇を取るのも分かってますし、最初から2週間~3週間は休業するところも多いです。なので一年間のうち、11ヶ月の間に一年分の売り上げを上げるように設定しないと経営者は有給休暇で潰れてしまいます。

僕が4年近く働いていたオージーのサロンは、オーナーが働き者だったので、サロンを2週間休みにするようなことはありませんでしたが、12月25日から1 月1日まで休みで、普通に1月2日から営業してました。場所が街のど真ん中に位置していたので、2日から働いている人を相手だったのでしょう。

しかし、日本人の僕にしてみれば、お正月三が日に働くというのは馴染めないので、ボスにお願いをして、12月28日29日30日は1人で働くから、その代わり1月2日3日は休みにして欲しいとお正月は毎年休みをもらっていました。

もうオーストラリアで年越しは7回目を迎えますが、未だに馴染めません。真夏のクリスマス、クリスマス商戦なんていうのもあるのかないのか、いつも通りに 時間はゆっくりと流れていきます。こっちでは「師が走る」なんて忙しさはありません。クリスマスプレゼントと称して小さなチョコレートなどを自分と関わる 全ての人に差し上げるという習慣は心が温まります。

日本のお正月の雰囲気はなんとも言えない独特なものがあると思います。年が終わるという慌し感、大晦日の除夜の鐘、みんなが「良いお年をお迎え下さい」と 声をかけあう。新年を迎え家族の健康と無事を願い初詣にでかける。世界中どこを探しても、日本のような味わい深い年末年始は無いのではないか。そろそろお 正月が恋しくなってきた。

今年も一年ありがとうございました。

2010年も、皆様にとって良い年でありますように。

第8話) 縮毛矯正の違い!

オーストラリアに来てビックリしたのが「縮毛矯正」でした。

何がビックリって、その料金体制と施術にかかる時間。

ショート – $600、(約5万円) 5時間。

ミディアム – $800、(約6万5千円) 6時間半。

ロング –  $1000、(約8万円) 8時間。

エクストラロング – $1200 (約10万円)10時間。

こんなに高い縮毛矯正であっても、ストレートヘアーに憧れているお金持ちの女性は、クレジットカードを持ってサロンに来るのです!

日本はというと・・・?

価格破壊の真只中、「新規のお客様に限り8千円」なんていうのもあるから驚きだ! 高いところでも2万円超える程度だろう、所要時間も3時間程度で終わる、長くても4時間あれば十分だ(カット別)。

この日豪の縮毛矯正における格差がどうしてなのか、僕なりに分析をしてみた。

豪州の場合、縮毛矯正は特殊な技術なので、できる技術者がいない。中途半端にやろうとして事故があった場合、裁判にもつれ込むケースがあるので、縮毛矯正を自身持ってやるサロンが少ない。需要はあるのに供給が非常に少ない、よって料金が高くなる。

所要時間が6時間も8時間もかかってしまうのは、いくつかの理由がある。
一つは単純に手が不器用、手が遅い(汗; そして、話が好きなので、手よりも口が動いている(笑)ランチタイムを平気で作って休憩する(笑) それだもの6時間以上かかるのも仕方が無い。でもこれらは努力で克服できそうなのだが、その努力があまり好きではないらしい。

次は、髪質の問題がある。パーマについて述べた第7話にあるように、髪の毛の質の違いが大きい。日本人の髪は「太いが薬液が浸透しやすく」、短時間で効いてくれる。見た目とは違って、西洋人の髪は今にも「壊れそうなくらい細くて柔らかい」のだが、薬液の浸透には本当に時間を要する。見た目でビビッてしまい日本人の髪と同じ感覚でやってしまうと、結果的に3日後にはクレームとして戻ってきてしまう。

ただ単に、コテで巻髪を創るにしても、オーストラリアの美容師学校では、クルクルと巻いて20秒は置きましょう!と習う。最初は「そんなことしたら、髪の毛こげちゃうよ!」って思いました。日本人の髪ですら、5~7秒も置けば十分ですから、アジア人より細い柔らかい髪に、20秒なんて置けないよ~なんて思ったものでした。しかし、本当に5~7秒程度では、全然形にならない!西洋人の細い柔らかい髪には倍以上の時間をかけないと、逆に効き目が弱すぎるのだという事を学んだ。

そしてもう一つ、薬剤の違いが感じられました。例えばですが、アイロン操作を終えて、二回目の薬液があります(日本では2液と呼び、海外ではニュートライザーと呼びます)。今の日本では2液の置く時間なんて3分とか5分で十分なのです。しかしオーストラリアで主流となっているブランドは20分も置きます。この時間というのは髪質が問題ではなく技術でもない、薬液の性質が異なるからなのです。あくまでも推測ですが、日本でライセンス切れの薬剤を海外に流してコストダウンをしているように感じられるくらいです。

次に日本の縮毛矯正事情はというと、なぜそんなに安いのか?それは、「カットデビューできていないスタッフの仕事」になっているのが一因にあると思うのです。カットができるスタイリストさんだったら、3時間でカットのお客さんを3人やるだけで1万円は稼げるのです。しかし、あれだけ細かい仕事をし、薬液にもコストがかかる仕事を、3時間~4時間かけて8千円の売り上げでは、やってられません。普通にカットを3人やっているほうが良いですから。日本のある美容室のオーナーさんとお話をした時に、「縮毛矯正は、できることならメニューから外したいくらいだ」とこぼしていました。

そこで、カットデビューできない若手のスタッフが2人がかりで右側と左側とで作業をしていくのです。そうやって短時間で利益が上がるように、稼げる技術者には触らせないようにして、料金を下げているのです。ただ、ここで問題が生じてきます。縮毛矯正は見れば簡単そうに見えますが、実際には長年の経験と勘が必要で、マニュアル通りにやると失敗してしまいます。

僕のお客さんの中でも、前髪だけ縮毛矯正をかけに他店へ行って、若いスタッフにやってもらった結果、顔周りの前髪からもみ上げにかけて、根本から切れ落ちてしまいました。真っ直ぐにしに行ったのに、髪全体が縮れ毛になってしまい裁判を起こしたいと言っていたお客さんもいました。残念な事に、オーストラリア人のサロンで事故にあったのではなく、「日本人」にやってもらって根本から切れ落ちたり、全部の髪が縮れ毛になってしまったりしているのです。

値段を下げて、その結果未熟な技術者の実験台のようになり、失敗して取り返しの付かないことになる。指導する側も責任をもって仕事を与えないと、泣くのはお客さんです。

オーストラリアの場合は、きちんとした毛髪化学まで追求して勉強している技術者が非常に少ないため、お金は高いけど酷い目にあった・・・その結果、縮毛矯正は良くないものだ!という噂になっていきそうで怖いです。

髪の毛の状態を読み取り、その傷み度合いによって薬液を調合し、時間配分を計算し、ひつようなたんぱく質を与えてあげる。アイロン(コテ)のあてる角度、熱の温度、アイロンの進む方向など・・・・同じ状態、同じ条件のお客様はいないですから、一万人一万色を操れる美容師になりたいものです。

今、僕は、日本の薬剤を、経験のある日本人が、相場の半額で、普通のサロンの半分の時間で、しかしクオリティは5倍!10倍!というプロモーションをオーストラリア人相手にしていこうと思っています。英語力がないとできないプランですが。。。

第9話) ヘアカラーは日本独自理論

日本で美容師として、しっかり勉強してきた人が、必ずぶち当たる壁はヘアカラー。日本のヘアカラー理論が、こうも世界から孤立しているなんで思いも寄らなく、戸惑いと驚きの連続でした。

どっちが良いとか悪いとかではなく、アジア人には日本の理論、西洋人には世界標準の理論が適している。頭の中で英語と日本語の二ヶ国語を使い分けるように、ヘアカラーだけはアジア人か非かによって二つの異なったカラー理論をチョイスしていかないと失敗してしまう。

このヘアカラーについては余りにも専門的過ぎるので、どうやって一般の人に説明すれば良いのかをいつも考える。やはり写真を交えて説明するしかないので、 世界と日本とで何が違うかを少しでも分かってもらえれば良いかと思う。かなり噛み砕いて説明をするのでプロの方は物足りないかと思いますが、御了承下さ い。

ヘアカラーを考えるに当たって重要な位置をしめているのが、「レベル(明度」です。どのくらい明るいのか、どのくらい暗いのか、「この髪の明るさはレベル7です。」とか「これは8トーンの明るさですね」とか表現します。

日本人の平均の黒髪は4トーンから5トーンと言われています。黒髪に何色を塗っても、黒は黒なので(黒い画用紙に何色の絵の具を塗っても色は見えません ね)、そこで、私たちの髪の色を作っているメラニン色素を壊していかないと、茶色も赤もアッシュも色が出てきません。壊せば壊すほどハッキリした色味が出 てきます。白髪をパープルに染めているお婆ちゃんを見たことあるでしょうか。あれは白い画用紙に色を塗っているのと同じなので、キレイに見えるのですね。

ヘアカラーをする時に、必ず白の液体(過酸化水素水)を混ぜ合わせて発色するようになってます。消毒用のオキシドールも2.5%~3.5%の過酸化水素水が入っていて、子供の頃、傷口の消毒でかなりしみて泣いた記憶もある人もいるでしょう。

日本の薬事法で、美容師が使えるのは6%の過酸化水素までです。その過酸化水素を利用して、髪の毛のメラニン色素を壊して、本来の髪の黒を明るくしていき ます。黒が壊れてなくなれば、隙間ができるので、その中に目的の色味(赤や茶、アッシュなどの希望の色)が発色されるというわけです。

これは、日本のカラー理論に基づいてのカラーチャートです。5トーンから15トーンまでありますね。ブリーチを使用しないで、一回で明るくなる限界は髪質にもよりますがおよそ12トーンです。
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さて、ところが世界標準のカラーレベルが全く違うんですね。これが戸惑いの元凶でした。

1~10までの10段階なんです(写真は2~9まで)。日本は15(理論上は20)まであります。

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でも、以下のようにに照らし合わせても合致しません。

世界標準         10    9   8   7   6   5  4  3  2  1
日本標準 15  14  13  12  11 10  9  8  7  6  5

世界の1、日本の5が同じなら、世界の5と日本の9は・・・全然違います。何の法則も見当たりませんでした。

僕がオーストラリアの美容師科コースのカラーの授業で、「Yasuの自分の髪のカラーレベルは?」と聞かれ、「僕の髪は5レベル」って答えたら、「あなた のようなアジア人の黒は1レベル」と何て事言うの?って顔で先生にビックリされました。日本では5レベルなのに・・・(笑)

このように、世界標準レベルの1レベル~8レベルの8段階を引っ張り出して、それを更に16段階のレベルに区分けして、日本独自のカラーチャートを作ったような感じです。

「日本では、こう習ったから、西洋は・・・?」という考え方をしたら、もっと分からなくなります。全く新たな分野を勉強していくと思って、「アジア人の髪は1レベル」と素直に覚えないと、いつまでも世界標準のカラー理論は取得できません。

世界標準の理論が全て正しいかというと、Yes and Noです。ケース・バイ・ケースですね。

海外の美容師さん(もしくは日本で経験の無い日本の理論をしらない日本人美容師さん)にヘアカラーをしてもらった人だったら、経験があるかもしれません が、薬液が頭皮にしみて痛くて我慢できず、家に帰ったら頭皮が真っ赤になっていて、2、3日後にはフケのように一皮向けてしまった。。。なんてよく聞きま す。

これは、先ほどの過酸化水素水なのですが、日本では6%までしか認可されていないものを、海外では12%まで美容師さんが使えます。ちなみに30%になると劇薬扱いになり火傷しますので、一般の人が入手するのは困難です、美容師でもそうです。

海外の理論では、「アジア人の髪は黒だから、ミディアムブラウンにするのも黒の色素をたくさん削らないと、色味が出てこない」という理論で、その最強の 12%の過酸化水素水を簡単に使用します。できるだけメラニン色素を削って、そこに目的の色素を入れればキレイな深みのある発色になると教わります。た だ、毎日のシャンプーで色味は落ちていきますから、一ヶ月もしたら、髪は黄色っぽくなり、ダメージもひどくパサパサになってしまいます。

ここが日本と違うところです。日本は6%の過酸化水素水までしか使えないので、この範囲の中で色味をつけていく工夫が施されています。本来の髪のメラニン 色素をそんなに破壊する事なく、自分の髪に残ったメラニン色素を逆利用して色を乗せれば、傷まないでキレイに発色されるように日本のカラー剤も工夫されて います。シャンプーで色味が落ちたとしても、激しい色の変化にはなりません。

逆にオーストラリア人の髪はというと、本当に殆どの人がカラーをしています。6週間に一度のリタッチをし、色素が流れてしまったのを、トナーといって色素 補給をしたりと、それはカラーにはマメです。パーマや縮毛矯正をやらない代わりに、髪のおしゃれはカラーに懸けていると言っても過言ではありません。

アジア人の髪では、ほぼ不可能なレベル10(世界標準理論)まで、簡単に出ちゃいますし、1レベルまで暗くする事も可能です。日本のレベルで言うと、4から15レベルより、もっと広い範囲でカラーを楽しめるという事なんですね。

そして、明るいレベルに持っていける分、微妙な色加減でオシャレを楽しめます。ブロンドヘアーと言っても、微妙に色合いの違いを調整する、ヘアカラーの技 術は目を見張るものがあります。この西洋人の髪の色を操るカラーリストは、日本の技術よりも上です。最初は、何がどう違うのか、ブロンドはブロンドじゃな い?って、その微妙さが分かりませんでしたが、今では目が超えて来ました。

色々と、日本の技術の方が優れていると、この章では説明してきましたが、ブロンドのヘアカラーの技術だけは、日本で育った美容師には真似のできない高度な技術のようです。

第10話) 西洋は胸、日本は足。

日本からオーストラリア社会に飛び込むと、流行というものが無いように感じられる。

一般に、流行に流されやすい日本人。人と違うものを身につけると疎外感ができて心地が良くない。周りの目が気になる。どこかのカテゴリーに自分が入っていないと不安。海外から日本を分析すると、そんな気がしてならない。

それに比べて、オーストラリア。 誰が何を身につけようが、お構いなし。自分の好きな色を身に付ければいいし、自分の好みを主張しても、誰も何も言わない。ピンクで統一された服やハットを身につけているお婆さんなんて、もう見慣れてしまったし、そんなので振り返っている自分が恥ずかしい。

男の子なんて、みんな短く刈り込んだ髪、短パンにTシャツ、そしてビーチサンダル。これ以上のオシャレをするとゲイに間違われてしまう。日本のメンズノンノやメンズヘアカタログをオージーの男の子に見せたら「おおお~、これって日本のゲイ・マガジンかい!」って興味深く見ていたのを思い出す(笑)日本の男の子が海外に出ると、ゲイに人気があるというのが理解できる。そのくらい日本人の男の子もオシャレなのである。

女性のメイクにしても、日本ではコンビニへ買い物を行くにも、きちんとお化粧をして出かける。しかし、こちらでは、ノーメイクで日焼け止めだけして外出なんて珍しくない。休日であれば間違いなくメイクアップなどしないでスッピンででかける。日本の感覚でメイクして髪の毛を巻いて、外にでれば「今日はパーティなの?」って声をかけられるであろう!

本当に、流行はないのか?って思ってしまうのだが、実は若い子の間ではキチンと流行がある。ただ日本のように周期は短くない。

髪の毛に関しては、 元々が細くて量が少なくクセ毛でウェーブがかかっているので、真っ直ぐにサラサラで量を多く見せたいという傾向がある。パーティの時などは、コテでクルクル巻いて、ゴージャスな髪にする事もあるけれど、やはりストレートアイロンで真っ直ぐに伸ばしたいらしい。

ファッションに関しては、胸を強調させるような服、ワンピースなどが絶対的な人気である。

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いくつかのブティックを回ってみました。どれも胸が強調されるようなデザインばかりです。

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これを日本人が着ると、どうもバランスがおかしいような気がします。何が違うのかは分からないのですが、何かが違うのでしょう。

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仕事柄、日本の女性ファッション雑誌も毎月のように送ってもらい見ていますが、ここで気付いた事は、「日本は足をきれいに見せる」ように意識し、「西洋は胸や背中をセクシーに」デザインされていると思います。