第9話) ヘアカラーは日本独自理論

日本で美容師として、しっかり勉強してきた人が、必ずぶち当たる壁はヘアカラー。日本のヘアカラー理論が、こうも世界から孤立しているなんで思いも寄らなく、戸惑いと驚きの連続でした。

どっちが良いとか悪いとかではなく、アジア人には日本の理論、西洋人には世界標準の理論が適している。頭の中で英語と日本語の二ヶ国語を使い分けるように、ヘアカラーだけはアジア人か非かによって二つの異なったカラー理論をチョイスしていかないと失敗してしまう。

このヘアカラーについては余りにも専門的過ぎるので、どうやって一般の人に説明すれば良いのかをいつも考える。やはり写真を交えて説明するしかないので、 世界と日本とで何が違うかを少しでも分かってもらえれば良いかと思う。かなり噛み砕いて説明をするのでプロの方は物足りないかと思いますが、御了承下さ い。

ヘアカラーを考えるに当たって重要な位置をしめているのが、「レベル(明度」です。どのくらい明るいのか、どのくらい暗いのか、「この髪の明るさはレベル7です。」とか「これは8トーンの明るさですね」とか表現します。

日本人の平均の黒髪は4トーンから5トーンと言われています。黒髪に何色を塗っても、黒は黒なので(黒い画用紙に何色の絵の具を塗っても色は見えません ね)、そこで、私たちの髪の色を作っているメラニン色素を壊していかないと、茶色も赤もアッシュも色が出てきません。壊せば壊すほどハッキリした色味が出 てきます。白髪をパープルに染めているお婆ちゃんを見たことあるでしょうか。あれは白い画用紙に色を塗っているのと同じなので、キレイに見えるのですね。

ヘアカラーをする時に、必ず白の液体(過酸化水素水)を混ぜ合わせて発色するようになってます。消毒用のオキシドールも2.5%~3.5%の過酸化水素水が入っていて、子供の頃、傷口の消毒でかなりしみて泣いた記憶もある人もいるでしょう。

日本の薬事法で、美容師が使えるのは6%の過酸化水素までです。その過酸化水素を利用して、髪の毛のメラニン色素を壊して、本来の髪の黒を明るくしていき ます。黒が壊れてなくなれば、隙間ができるので、その中に目的の色味(赤や茶、アッシュなどの希望の色)が発色されるというわけです。

これは、日本のカラー理論に基づいてのカラーチャートです。5トーンから15トーンまでありますね。ブリーチを使用しないで、一回で明るくなる限界は髪質にもよりますがおよそ12トーンです。
colourchart1.jpg
さて、ところが世界標準のカラーレベルが全く違うんですね。これが戸惑いの元凶でした。

1~10までの10段階なんです(写真は2~9まで)。日本は15(理論上は20)まであります。

colourchart11.jpg

でも、以下のようにに照らし合わせても合致しません。

世界標準         10    9   8   7   6   5  4  3  2  1
日本標準 15  14  13  12  11 10  9  8  7  6  5

世界の1、日本の5が同じなら、世界の5と日本の9は・・・全然違います。何の法則も見当たりませんでした。

僕がオーストラリアの美容師科コースのカラーの授業で、「Yasuの自分の髪のカラーレベルは?」と聞かれ、「僕の髪は5レベル」って答えたら、「あなた のようなアジア人の黒は1レベル」と何て事言うの?って顔で先生にビックリされました。日本では5レベルなのに・・・(笑)

このように、世界標準レベルの1レベル~8レベルの8段階を引っ張り出して、それを更に16段階のレベルに区分けして、日本独自のカラーチャートを作ったような感じです。

「日本では、こう習ったから、西洋は・・・?」という考え方をしたら、もっと分からなくなります。全く新たな分野を勉強していくと思って、「アジア人の髪は1レベル」と素直に覚えないと、いつまでも世界標準のカラー理論は取得できません。

世界標準の理論が全て正しいかというと、Yes and Noです。ケース・バイ・ケースですね。

海外の美容師さん(もしくは日本で経験の無い日本の理論をしらない日本人美容師さん)にヘアカラーをしてもらった人だったら、経験があるかもしれません が、薬液が頭皮にしみて痛くて我慢できず、家に帰ったら頭皮が真っ赤になっていて、2、3日後にはフケのように一皮向けてしまった。。。なんてよく聞きま す。

これは、先ほどの過酸化水素水なのですが、日本では6%までしか認可されていないものを、海外では12%まで美容師さんが使えます。ちなみに30%になると劇薬扱いになり火傷しますので、一般の人が入手するのは困難です、美容師でもそうです。

海外の理論では、「アジア人の髪は黒だから、ミディアムブラウンにするのも黒の色素をたくさん削らないと、色味が出てこない」という理論で、その最強の 12%の過酸化水素水を簡単に使用します。できるだけメラニン色素を削って、そこに目的の色素を入れればキレイな深みのある発色になると教わります。た だ、毎日のシャンプーで色味は落ちていきますから、一ヶ月もしたら、髪は黄色っぽくなり、ダメージもひどくパサパサになってしまいます。

ここが日本と違うところです。日本は6%の過酸化水素水までしか使えないので、この範囲の中で色味をつけていく工夫が施されています。本来の髪のメラニン 色素をそんなに破壊する事なく、自分の髪に残ったメラニン色素を逆利用して色を乗せれば、傷まないでキレイに発色されるように日本のカラー剤も工夫されて います。シャンプーで色味が落ちたとしても、激しい色の変化にはなりません。

逆にオーストラリア人の髪はというと、本当に殆どの人がカラーをしています。6週間に一度のリタッチをし、色素が流れてしまったのを、トナーといって色素 補給をしたりと、それはカラーにはマメです。パーマや縮毛矯正をやらない代わりに、髪のおしゃれはカラーに懸けていると言っても過言ではありません。

アジア人の髪では、ほぼ不可能なレベル10(世界標準理論)まで、簡単に出ちゃいますし、1レベルまで暗くする事も可能です。日本のレベルで言うと、4から15レベルより、もっと広い範囲でカラーを楽しめるという事なんですね。

そして、明るいレベルに持っていける分、微妙な色加減でオシャレを楽しめます。ブロンドヘアーと言っても、微妙に色合いの違いを調整する、ヘアカラーの技 術は目を見張るものがあります。この西洋人の髪の色を操るカラーリストは、日本の技術よりも上です。最初は、何がどう違うのか、ブロンドはブロンドじゃな い?って、その微妙さが分かりませんでしたが、今では目が超えて来ました。

色々と、日本の技術の方が優れていると、この章では説明してきましたが、ブロンドのヘアカラーの技術だけは、日本で育った美容師には真似のできない高度な技術のようです。

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